鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  ウラルアルタイ語

ウラルアルタイ語

                       鈴森 武雄(1stFlute)


 以前大琴(琴は竹冠でした。ワープロで出てこないので以下代用使用します)の文の中で、韓国に滞在したと書きましたが、日本と韓国の関係、歴史等いろいろ感じる処があったので、今後2〜3回書いてみます。

 日本と遠く離れた全く文化風土の異なる国に滞在する場合は、日本と異なる習慣や考え方、行動パターンは、そんなもんだと考えて納得して受け入れるか、違って当たり前と考えるのではないでしょうか。
 しかし顔や外見から全く(ほとんど)区別出来ない韓国人、また昔から密接な文化や人の交流があった隣の国、生活レベルも日本とそれほど差が無くなってきた韓国で暮らしていると、文化の相違、思考や論理の基本的相違、仕事の仕方等で、どうしてこんなに日本と異なっているか、日本と同じでないとおかしいと考えていらいらしたり、人間関係で悩む事も多い。

 上記のように考えさせられる点の一つが言葉である。 今回はこの言葉をテーマとしたい。

 韓国語は日本語と同じウラルアルタイ語に属している。このウラルアルタイ語は単語の並び、組立が非常に似通っており、言葉の起源が共通であったと考えられる。以前合奏団便りに大琴(膜のある韓国の笛)の雑文を寄稿しましたが、その時韓国の友人が調査結果を連絡してくれた出だしの韓国語の文例を見ていただく事にする。

   アンニョン        ウィレー    デグン カナ ネヨン    ファギ    チョサ
   安寧ハシムニカ。  依頼ハシン 大琴エ 関ン内容ウル 下記ワ カッチ調査ハヨ
   安寧でおられますか。依頼された 大琴に 関する内容を 下記のように 調査し、

   ヨンラク
   連絡ハムニダ。
   連絡致します。

 韓国では日常漢字はほとんど使用されてないが、日本と同じように単語の多くに本来漢字の熟語が多く存在している。しかし現在では韓国語で表記使用されるのが普通である。上記の文は私(日本人)向けの文章として特に漢字混じりで書いてくれたものである。

 この文を見れば語順が全く同じで、日本語といかに似ているかおわかり頂けるで有ろう。語順が同じウラルアルタイ語という意味が理解頂けると思う。日本語の起源は韓国に有りと思ってしまう。
 漢字の発音は中国語に起源しているが、なんとなく日本語の発音と似ているところが多い。従って中国、韓国、日本と発音が変化しながら日本にたどり着いたのであろう。漢字を除くてにおは(助詞)の部分の発音は韓国と日本語で全く異なっている。てにおはの部分は漢字よりずっと古い時代に日本に伝わってきたのであったろう。

 最近日本語のなかにあふれるほどの英語が入って使用されていても、日本語としての語順や基本的構造は全く変わらない。非常に古い時代にウラルアルタイ語が人の移動とともに日本に入ってきた後、長い年月の過程で外来語の流入や方言で単語は変化したが、基本的文法構造は変わらずに残ったのであろう。

 ところで韓国語は母音が日本語の2倍以上あり、また硬音という日本語にない子音や、n.m.g等の子音で終わる単語がいろいろあり、日本人にとって発音は実に難しい言葉である。
 前記の通り韓国のウルサンという人口75万人の地方都市に住んでいたが、釜山から高速道路のチケットをゲートで購入するのに、ウルサンのウの発音が出来なくて、いつもトラブッていた。
 こんなわけで、韓国語の先生からさんざん発音の注意を受けたのだが、結局ものにならずに終わってしまった。 逆に韓国人にとって、日本語の発音は単純容易で、漢字混じりの文章はすぐ理解でき、言葉の順序は同じ、ということから、日本語ほど勉強に容易な言葉は無い。日本語をすぐにマスターしてしまうのである。また英語の発音も上手である。

 ところで、モンゴル語も同じウラルアルタイ語であると聞いているが、どんな文法や単語になっているのであろうか。大阪外語大学でモンゴル語を勉強した司馬遼太郎は『街道を行く−モンゴル紀行』でモンゴル語も日本語と同じ膠着語であると書いている。日本語の起源はこの地方であろうか。また歌も節回しが日本の追分に似て日本の民謡を思わせる音楽であったとも書いている。

 ハンガリーもウラルアルタイ語で語順が同じで親近感を覚えたとの旅行記事を最近の新聞のなかに見つけた。日本とハンガリーは、はるかかなたの距離であるが、遠い昔、祖先と言葉が同じ起源であったのだろう。フルート愛好者のなかでかって圧倒的支持を受けたのがドップラーのハンガリー田園幻想曲である。東洋の郷愁を感じさせて、特に日本人に好まれるのである。これもハンガリー人が同じアジア系と言うだけでなく、ウラルアルタイ語という特に日本に近い関係があるせいかもしれない。まさしくハンガリー人はマジャール人というウラルアルタイ系のアジア人の血を引いているとの事である。事によると蒙古斑もあるかもしれない。司馬遼太郎は、蒙古は同じ膠着文字であるから、歌の節回しまで似てくるのであろうかと上記の紀行に書いている。ハンガリー田園幻想曲もウラルアルタイ語に由来する情緒・雰囲気から日本で人気が高いのだろう。いやさらにハンガリーと日本は音楽のルーツまでもが同じだったのかもしれない(?)。


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