鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  韓国のベーベー管

韓国のベーベー管

                       鈴森 武雄(1stFlute)

 鎌倉新フルート合奏団第8回の演奏会ではクルミ割りでベーベー管(膜を張った渡部先生のソプラノフルート)の音色が曲に見事にマッチングしてすばらしい効果を上げていました。今回この様な結果が得られたのは、この曲がいろいろな国の音楽であり、ベーベー管の独特の音色を飲み込んで、いや逆にこの曲が、多様で独特の音色を必用としていた為であったことによるものと思います。

 当団で使用したのはソプラノフルートですが、ジェラート(プロのフルート合奏団)ではコンサートフルートのべーべー管で、ソプラノ管よりべーべーの程度はマイルドでした。この膜はラップを使用しており、出来るだけ安いラップの方が音が良いと聞いた事があります。

 このべーべー管は日本のフルートメーカーが中国の笛にヒントを得て開発したものと聞いています。小生合弁会社の設立、プラントの建設と運転で1988年から韓国に4年弱いましたが、そのとき膜を持った横笛が有ることを知りました。

 一昨年上記の韓国の合弁会社の10周年式典の為、ソウルに出張し、その際アトラクションとして韓国伝統芸術として韓国の横笛、琴、太鼓、踊りのアトラクションがあり、無形文化財クラスのすばらしいものでした。このとき膜を張った韓国の横笛の表現力の大きさに圧倒されてしまいました。そのときの演奏者や曲目の紹介パンフレットはどうしても見つからず紛失してしまったようで残念です。この笛の音は私たちが持っている一般的な笛の音色のイメージと全くかけ離れたもので、膜の振動や息づかいが管に共鳴して実に複雑、独特なものです。また音量の幅の大きさ、多様な音色、息が膜を動かしてつくる幅広い音の表現力は、まさに韓国の情念を表現するに最適であると感じ入った次第です。深く、悲しく、強い鬱屈とした感情の表現力はフルートをはるかにしのいでいました。

 韓国の琴や太鼓も奏法が独特で興味あるものですが、韓国のリズムや音楽と併せて、別の機会に報告させて頂きます(と言っても底が浅く何もありませんが)。

 今回この韓国横笛について若干の情報を入手しましたので、紹介しておきます。

 この韓国の笛の名前は大琴といい、中琴、小琴と共に新羅三竹といわれる管楽器で三漢時代(歴史の教科書に出てきましたが、皆さん覚えているでしょうか)から存在してきたといわれている(笛がどうして琴なのかは今後の調査を要します)。

 大琴は双骨竹(竹の両側の溝に枝が生えていく竹)の株の部分で作ったものを一番とするが、多くないため、黄竹で作ったものが多い。一番初めの節に吹き口があって、次の節に溝孔があり、葦の内部の膜を張って主に高音で振動するようにし、透明な音をより透明にして(よく通る音・表現力有る音?少なくとも私の認識ではピュアーな音を指向してはいない)くれる。その下に六つの孔があり、両手で三つずつ塞いで音を調節する。

 大琴に関する伝説の中に萬波息笛と言われるものがあるが、これは新羅古記によると、シンムン王時代、東海の真ん中にの頭のような小山が忽然とあらわれ、その山の上に竹があったが、昼は二つだが、夜になると一つになるということで、シンムン王が人を呼び、切り落として楽器にして、萬波息笛と名付けた。この笛を吹けば、戦場では敵兵が逃げ、日照りが続くときには雨が降り、梅雨の時には雨が止むとして当時の国宝だったという。

 とにかく大琴は私の従来の笛の認識をはるかに超越した実に興味有る笛でした。

 今回は韓国の笛について簡単に紹介しましたが、次回東南アジアの笛について紹介したいと思っています。


東海:韓国から見て東海即ち日本海をさす。東海から龍が空にのぼる等縁起の良い方角と捉えられている。
亀:韓国ではお寺やお墓のいわれ等を書いた石碑が大きな亀の上に乗せて置いてあり、よく見かけられる。古来縁起の良い動物とされ、日本でも古墳の壁画に亀の図が描かれているのはよく知られているとおりである。

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