鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  自作の防音フルート練習室

自作の防音フルート練習室

鈴森武雄(Flute)

 去る4月から転勤(当然単身赴任です)で福島県白河に来ていたが、新幹線練習も限度であるので、6月5日に当鎌倉新フルート合奏団第15回定期演奏会が終わったのを区切りに一旦退団させて頂いた。こちら白河で心置きなくフルートの練習をするため(?)、防音室を自作することにした。合奏団には防音室に興味をお持ちの方もおられるようであるので、作り方とその結果を報告する。

 5年度ほど前、合奏団便りに魔笛という文章を寄稿し(当合奏団ホームページに現在でも掲載されているので参照ください)、その中で自作防音室を作ったものの、いいかげんな作りで見事に失敗したことを書かせていただいた。前回の失敗を糧に、今回はきちんとした防音室が出来たかそれとも二度目の無駄遣いだったのか、読んで判断して頂きたい。尚以下は防音室の作り方の延々たる文であるので、興味のない方はここで終了ください。

 防音室の作成を開始したのは平成17年5月の連休明けからであった。設置場所は普通の6階立てマンション2階の6畳ほどの板張りの部屋である。歩いて5分ほどのすぐ近くに巨大なdo it yourselfの店があり、あらゆる材料、工具がそろっており、大工さんなどのプロも材料や工具を買いに来ている。またその店の中で工具を無料で借りて自分で切ったりできるし、軽トラックの無料貸し出しまで行っている。地方ならではの店の大きさとサービスの良さである。

 防音室の大きさは中で笛を吹ける縦1.2m×横1.2m×高さ1.8mとした。出来上がってみるとH管のフルートでもあと5cmずつは小さくしても大丈夫であった。まず床を傷めないようプラスチックのシートを敷いた。その上に35×45の赤松構造用角材で小屋の四角い枠組みを作った。この構造材は価格の安い適当な材料であった。組み立て用に衝撃電動ドライバー(8千円)を購入したが、これは各種サイズのネジ止めに使用でき、以後の作業をすごく楽にしてくれたし、クギと違って防音室はガタ・緩みのないものになった。

 その後5.5mmのベニヤ板(1枚630円)を張りつけて行った。この5.5mmという厚さは、強度の点、遮音の点、防音シートの貼り付け、作業性からバランスがとれた厚さであった。まず四角い枠組みを90度横に倒して底にベニヤ板を張りつけた。枠組みを元にもどして、その上に1ミリの防音シートを、さらにベニヤ板を敷いて人が中に入れるようにした。次に小屋の枠組みの外側の壁と天井にベニヤ板を張りつけた。ベニヤ板の標準寸法は長さ1.8mであるので小屋の高さと同じで、壁にそのまま張りつけるのに便利であった。苦労した点はベニヤ板どうしが接する隙間や板のそりであった。そりはベニヤ板どうしを平らにしておいて、後で述べるタッカーで留め、隙間は内側から防音シートを貼り付けた。

 インターネットによると防音シートはいろいろあるようであるが、店には、厚さ1ミリ、長さ10メート、重量19kg、価格1本5,250円の1種しか置いてなかったので、これを使用することにした。昔防音室を作ったときは厚みももっと厚く、重量もはるかに重く、価格も5倍くらいしたが、今回は手近かにある材料で安く済ませることにした。防音効果は重量で決まるので出来るだけ重たい防音シートが好ましいが、防音の程度をどの程度にするかで決めれば良いし、必要に応じて重ねて使用しても良い。

 かって建設を担当したプラントのブロワーで近寄れないほどのものすごい騒音が発生したが、サイレンサー(車のマフラーみたいなもの)の設置と鉛のむくのシートの張りつけで絶大な防音効果を上げた経験がある。鉛は比重が大きく、シート状で自由に変形できるので、防音材として性能は最適であるが、家庭用に入手できるだろうか。

 壁と天井にベニヤ板の取りつけが終わったところで、ドアの製作・取り付けを行うことにした。ドアは5.5ミリのベニヤ板2枚の間に防音シートをはさみサンドイッチにして作成し、大きめのドア用蝶番で小屋の枠組に固定した。フレームのないベニヤのドアであるので蝶番は取り付け向きを逆にして取り付けた。ドアと周りのフレームの隙間を2〜3ミリにすべく苦労したがかなりの精度(マンションのドアは隙間5ミリあった)で出来上がり、ドアの後ろにはさらに当て板を取り付けて隙間を小さくした。このあと20ワットの蛍光灯(2000円)を取り付けた。

 6月8日とりあえずベニヤ板製の小屋が完成した。これだけでも密閉性は良いので、一応の防音効果が認められた。

 このあと前記の防音シートをベニヤ板の外側に張りつけていった。防音シートは14メートルほど必要で2本購入した。取り付け方法はよく新築工事で見かけるホッチギス状の留め工具「タッカー」を用いることにした。この道具は以外に安く500円ほどであり、家に1台あれば、このほかいろいろ使えそうである。尚硬い木材には食い込まないこともあるので注意が必要である。今回は単身赴任で期間も短いので見てくれは一切無視し、作業性を優先してベニヤ板の外側に防音シートを張りつけたが、外観をきれいにする為には、内側に張ったり、サンドイッチにして壁紙を張るなどがよいであろう。防音シートで小屋を完全に包むことが出来た。

 6月18日防音シートの張りつけが終わり、一応完成した。見てくれは悪いが一応機能している。性能はベニヤ板と防音シート1枚で、簡易防音レベルは達成である。もともとある程度の遮音性のあるマンションで単身赴任であるので、この程度でよいであろう。

 防音レベルを上げるには、ベニヤ板の内側にガラスウールを充填して、さらに内側にベニヤ板を張りつけもう一度防音シートを張りつければよい。一旦空間を設けると防音効果は大きいことになっている。ここまでやればヤマハの防音室並みの35デシベルカットに近い性能になるであろう。小屋の構造としてはそれが可能となっており、一般的な防音室を望む場合にはそこまでやる必要があろう。現状は35デシベルカットの半分以下の性能である。尚35デシベルカットを目標にするときは防音室と床の間を空けるのがいいらしい。

 防音室の中で笛を吹いてみると、中で共鳴してうるさく、耳にガンガン響いた。とりあえず大きなタオルなどをかけて調整したが、そのうち壁紙など吸音性のあるものを貼ればよいであろう。

 ホームページには防音室に専用の換気扇が必要とあるが、まだ取り付けていない。防音室用換気扇のメーカーや入手方法が書いてないし、近くのdo it yourselfの店でも見当たらない。ヤマハの防音室にはちゃんとした換気扇があるらしい。この状態で笛の練習を開始した。狭い密閉性の良い小屋であるので温度が上がって暑いことこの上なく、うちわを買いに走った。それでも汗まみれの惨憺たる状態であり、ドアも頻繁に開けざるを得ず、従って秋までは酸欠・窒息死の恐れはない。どなたか早急に防音換気扇の紹介をお願いしたい。教えないでそっとしておきたい?? 毎晩、音楽練習室白河ミイラ殺人事件という推理小説のトリックを考えているが、寝つきがいたってよいので、まだ考えつかない。

 私の性格は根はグータラである。防音室は暑いしとながめてばかりで、最近購入したクッションのよく効いた椅子に陣取ってテレビばかりで、笛はなかなか手にしないでいる。

ワイフの一言
 単身赴任が終わったら、小屋を作る技術を生かして、多摩川の橋の下にブルシートハウスを作って笛をご自由にどうぞ。あなたにお似合いの別荘ね。

費用
 赤松構造材2000円、防音シート10500円、べニヤ5000円、ネジ1000円、蛍光灯2000円、衝撃電動ドライバー8000円、鋸1000円、合計29500円



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