鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  ニュー・クーパー・スケール

ニュー・クーパー・スケール

鈴森武雄(1st Flute)


5年度ほど前、合奏団便りにフルートの材質について寄稿し、そのなかでチタンについてどんな音になるであろうかと書いたが、その後インターネットでチタンのフルートを製作しているLANDELLという会社を見つけた。このメーカーのフルートは銀で5,100ドルであるが14金でも11,370ドルと非常に安い。それに対してチタンは12,050ドル(数年前同社のチタン製フルートは19,500ドルであったのでずいぶん安くなってきているが)と14金を上回る価格である。チタンはメガネのフレームに使用されるなど非常に軽く、硬くて、弾性があり、貴金属と正反対の物性を持っている。価格からは金を上回る音色が期待出きるのであるが、いったいどんな音質なのであろうか。材質によって音色が変わるかという議論のいい材料であろう。

さてこのLANDELL社のホームページに「ニュー・クーパー・スケール」のフルートをこの春発売したとの記事が出ていたので紹介しておきたい。詳しく知りたい方はホームページを参照頂きたい。

LANDELL社は音程が改善された「ベネット・クーパースケール」を1972年に導入しているが、このスケールは現在世界のフルートの標準になっているとの事である。クーパーはベネットと離れてその後さらに研究を続け「ニュー・クーパー・スケール」の開発に成功した。LANDELL社はフルートメーカーとして始めてこのモデルをこの春発売し、ドイツ ハンブルグでのフルート展示会にも出展したとの事である。同社は全モデルに採用するようである。

同社がホームページに公開している@LANDELL社のBennett−Cooper Scale、A有名他社モデル、BNew Cooper Scale(NCSmodel)のピッチを比較する。これらの図では各音の正しいピッチからのずれがcents単位で示されている。

まず@のLANDELL社のフルートとAの有名他社モデルを比較すると、LANDELL社のフルートは有名他社モデルに比べて中音C〜高音Cの中音域の音程が正確であるが、低音C〜中音Cの低音域はやや低めであり、高音C〜最高音Cの高音域は逆に高めになっている。尚私の持っているクーパーモデルと名前がついているフルートのピッチはAに非常に似ているが、最低音のHはAのように高くはない。

次に@LANDELL社のBennett−Cooper Scaleと、BNew Cooper Scale(NCSmodel)のピッチを比較する。Bennett−Cooper Scaleでは低かった低音域がNew Cooper Scaleで改善されており、中音域ではH及び上のCなどが改善されている。高かった高音域では全体に著しい改善がなされている。

LANDELL社は中高音で音程のばらつきがなくなり、特に高音で理想値から平均9centsのずれに収まり、音程は著しく改善され、均一化されているとしている。この「ニュー・クーパー・スケール」がはたしてフルートの世界標準になるであろうか。音程以外に音色や音の出しやすさなどがどうなっているかが問題であろう。


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