鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  半導体とコンピュータ,電話とインターネット

半導体とコンピュータ,
電話とインターネット

                      栗林 道夫(Alto Flute)

半導体とコンピュータ

   携帯電話に始まり、テレビ、パソコン、カメラ、DVDと話を続けてきたが、合奏団のメンバーの中には「何を言っているのかさっぱりわからん」という人も居る筈。何がそのようにしたのか、この際思い切ってその本質に接近してみよう。
   電子部品の主役が真空管からトランジスターに代わったのは昭和30年代の初期だった。
   ソニーがアメリカでトランジスタラジオを売り出したのが同じ時期だ。情熱的な技術屋、盛田氏が井深氏に出逢い、これを進めた。2人とも今では故人になってしまったが、この二人の天才が「日本のソニー」を「世界のソニー」にした。
   トランジスタはアメリカで発明された後、日本を舞台に大きく成長する。トランジスタに代表される半導体はコンピュータと共に驚異的な発展をとげる。コンピュータに半導体が使われ、数多くのトランジスタを1個に集積した半導体が使われるようになったからだ。
   その単位はセンチからミリ、さらにはそれ以下になって行く。
   1971年、4ビットのコンピュータ用CPUが誕生した。この半導体製品がメモリー用の半導体と共に発展をする。
   1982年、64Kビットの半導体メモリーが華々しく登場。当時これが脚光を浴びたのはその製造プロセスがそれまでの10ミクロンから3ミクロンの微細化に成功したからだった。日立、東芝、三菱電機、富士通、NECなどが代表選手として活躍。1985年、突然市場を襲った大不況に半導体業界は生き残りをかけて1ミクロンの微細化に挑戦し、1メガビットの半導体メモリーを開発。この実用化でコンピュータの性能は飛躍的に向上した。
   1991年、世界経済を巻き込んだ平成不況に日米半導体摩擦もからみ、その難関を打ち破るために0.5ミクロンの微細化による4メガビット半導体メモリーの開発に挑戦。
   こうして開発された半導体メモリーの実用化は、大型コンピュータがパソコンにその座を奪われるという劇的変化をもたらした。
   コンピュータの歴史に残るダウンサイジング現象はこうして起きた。そしてパソコンの時代になり、パソコン同士を結ぶネットワークとしてインターネットが生まれた。今では世界の半導体メーカが0.1ミクロン以下の半導体に挑戦中で、昔は部屋全体を占めていた
コンピュータが1台のパソコンになり、ついに1台の携帯電話になってきたと言える。
   話が再び携帯電話に戻ったが、これだけのことが20世紀後半に起きた。端末は極めて小さくなり、誰もが買える値段になった。21世紀はそれをどのように使うのか、主に使い方を巡る競争になるとされている。これまでは作って売る側に主体性があったが、これからは使う我々に主体性が移ってきたことになる。我々合奏団のメンバーはこれを有効に活用しているので、時代の先端を走っていることになる。

電話とインターネット

   息子が小学生の頃、電話による連絡網で連絡を受けたことがあった。息子が受けた内容は「コサネケッコウ」だった。息子は意味が解らず私に聞いたが私も解らなかった。結局そのまま次に伝えた。
   翌日息子が確認した内容は、当日の行事が「小雨でも決行」というものだった。面白いことに、最後にこの連絡を受けた者だけが意味を理解し、途中は全員が意味不明のまま次に伝えていた。
   当合奏団の連絡網は、最近インターネットとFAXが主に使われるようになり、こんな心配はなくなった。これからの時代は電話よりインターネットの方が主流になるという。
   電話はグラハム・ベルの発明に遡り、その後1895年に自動交換機が発明され、現在の電話交換網に発展してきた。日本ではNTTによる電話事業の独占が定められ、長らく通信の鎖国状態が続いた。NTTによるデジタル交換機の整備は、1998年にようやくこれが終了したので百年以上かかったことになる。その間、毎年大型の設備投資が行われ、高い料金体系が築かれた。
   インターネットは1980年、コンピュータ同士を結ぶネットワーク(IP網)として構想され、電話のための交換網に比べたら日が浅い。電話機は通信網の中心に大掛かりな交換機が必要だったが、コンピュータは交換機を必要としない。この簡単なIP網は非常に効率的で、コストも1/10以下で済む。パソコンでインターネットを利用するには、このIP網が適している。
   IP網に繋がる端末はパソコン以外に家電製品などへ広がりつつあり、流れる情報量も年率10倍の勢いで増え続けている。昨年、NTTの売上高に占めるインターネット用が電話用を初めて上回った。この傾向は今後さらに進み、2003年には通信量の96%がインターネット用になるとの話しもある。
   IP網の出現は、これまでの交換網に疑問を投げかけるという予期しない結果を生んだ。
一年前、日本テレコムは「現在の電話交換設備を一掃する」ことを決めた。NTTに対抗する新電電各社もこれを決めた。NTTにとって、既存の電話交換網を新しいIP網に変えるとなれば無駄になってしまう設備が多すぎ、これまでの既得権が一転して重荷となる。NTTは今後、この重い足かせを引きずることになる。
   NTTの電話交換網には6千万の加入者がおり、NTTに対抗する新電電各社のIP網はこれに相互接続してサービスすることになる。その場合、NTTに接続料を払わなければならない。この料金が高いことを米国が指摘している。新聞やテレビが報じているように「NTT接続料問題」は通信の自由化を求める米国との間にこうして起き、交渉が決裂した。米国は今春にも対日制裁の挙に出る構え。
   これまでの日米貿易摩擦は日本から米国に輸出される工業製品がその原因だった。米国は報復として日本の通信市場を狙っている。資本力と豊富な音楽や映像などのソフト資産が彼らの武器だ。軍事力や技術力を競った人類の歴史が変わろうとしている。

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