鎌倉新フルート合奏団:合奏団便りから
  次世代CD

次世代CD

                      栗林 道夫(Alto Flute)

次世代CD(レコード編)

   我々が手軽に音楽を聴こうと思えばCDがあるが、一昔前はLPレコード、さらにその前はSPレコードであった。SP時代が30年続き、その後、LP時代が30年続いた。CDはデビューして十数年しか経っていないが、早くも次の方式を巡って世の中は騒がしくなってきた。
   その理由は、2つの方式を巡ってメーカ同士が対立しているからだ。一つはDVD−A(オーディオ)であり、日本ビクター、東芝、松下などが次世代CDとして規格を決めた。DVDはCDと同じ12cmのディスクにビデオ映像をデジタル記録するために開発されたもので、多チャンネル立体音響と映像によるホームシアターへの期待もある。
   もう一つはソニーの開発したSA(スーパーオーディオ)CDだ。ソニーはシンプルな2チャンネルにこだわりを持っており、オーディオと映像とは別のものとする考え方だ。まっぷたつに割れてしまった業界に、オーディオ評論家もうろたえている。
   ここで想い出されるのがVTR戦争で、ソニー陣のベータ方式とビクター陣営のVHS方式が争った。松下の加勢で、最後はVHSに軍配があがったが、専門家の話ではベータの方が技術的に優れていたという。この争いはソニー対ビクターではなく「ソニーの技術」対「商人松下による包囲網」との争いだったように思う。
   我々の関心は「音楽を聴くのに映像は必要か」という点である。オペラや音楽映画などには映像が必要だが、大部分の音楽は映像がなくても良い。
   かつてLPがアッという間にCDに駆逐されたのは、レコードメーカが、手持ちのLPマスターをCD化するだけで良かったのでソフトに困らなかったからだ。SACDは映像がないのでソフトに既存のマスターを使うことができ、ソニーの方式はその点で有利だ。
   「機器とソフトは鶏と卵の関係」なのは歴史が教えている。
   かつてパソコンといえばNECのPC98という時期があった。これはPC98が特に優れていたからではない。独自の仕様で先発したPC98に専用のソフトが豊富にそろった後で、各社が別の仕様のパソコンで対抗したが、市場に出回っているPC98用ソフトが使えなかったからだ。パソコン買うならソフトの多い方が良いに決まってる。
   松下陣営のDVD−Aは、多チャンネルの音のほかに映像までもDVD用として新たに収録しなければならない。DVD−Aは当分ソフト面での苦戦が予想される。しかしCDがDVDに代わるのは時代の流れであり、既にカーナビやゲーム機などにはCDに代わってDVDがメモリー用として使われ始めた。カー・オーディオやパソコンなどに使われているCDが全てDVDに置き換わるのは時間の問題である。
   SACDの「音」にこだわり続けるソニーがDVD陣営の包囲で孤立するか、はたまたソニーが主張する「音楽に映像は関係ない」のか、やがて歴史がこれに評価を下す。
我々合奏団のメンバーとしても、関心を持ってこれを見守りたい。


次世代CD(ゲーム機編)

   我が合奏団の新年初練習は1月9日に始まり、モーツアルトの交響曲第41番の譜面が全楽章そろった。翌日は成人式であった。昨年と同様に新成人のマナーの悪さが目立ち、記念式典中に携帯電話も鳴ったようだ。しかし彼らのおかげで日本の携帯電話が世界一になったようなものだし、同様にゲーム機も世界一になった。今、世界中が日本でこれから発売される次世代ゲーム機に注目している。これにDVDが使われるからだ。オーディオ分野でDVD陣営を相手にしているソニーが、一方ではDVDを武器に世界の巨人企業を相手にしようとしている。

   家庭用ゲーム機はパソコンと同じ性能を持つコンピュータである。ゲーム機はパソコンの歴史と共に成長してきた。その昔、NECがPC−6601や8001などという幼稚なパソコンを世に出した当時から、このマシンを使うゲームは存在していた。当時は磁気テープをメモリーに使っていたが、その後は主にCDが使われるようになった。
 任天堂のファミコンやゲームボーイ、さらにはバンダイのタマゴッチなどは誰もが聞いたことがあると思う。現在、家庭用ゲーム機ではソニーのプレイステーションが一番人気で、昨年12月、その台数はついに7千万台を超えた。これにはCDが使われている。
   今年3月、次期モデルのプレステ2が発売される予定で、これまで使っていたCDと共にDVDも使えるようになる。ゲームソフトは全世界に4千タイトルある現在のプレステ用のCDが使える。そうなると競合するセガのドリームキャストや任天堂64などに比べてソフト面でプレステは有利だ。プレステ2が注目されるのはインターネット経由で離れた相手とでもゲームを楽しめるということにある。ゲーム機がインターネットに繋がると、パソコンがなくてもゲーム機でパソコンと同じことができるようになる。
   これが思わぬ波紋を広げた。
   「NTTドコモと米マイクロソフト社が新会社を設立」
   新年早々こんなニュースが流れた。日本のゲーム機を恐れる巨人マイクロソフトによる、これが生き残り戦略なのだ。世界中のパソコンの基本ソフト(ウインドウズ)を独占してきたマイクロソフトが日本のゲーム機を恐れる理由は、ゲーム機によってパソコン時代が終わることにある。マイクロソフトは次期パソコン用に開発した基本ソフトをパソコンに代わる機器に採用して貰うことに躍起になっている。その結果、ゲーム機に対抗するために携帯電話に目を付け、この業界でトップのNTTドコモと手を組んだ。
   インターネットはゲーム機、テレビ,カーナビ,携帯電話、といったさまざまな機器からアクセスが可能になりつつあるが、どれも日本が得意とする機器ばかりだ。
   最近の日本が得意とする分野は、機器の製造ばかりではない。一昨年、セガの人気格闘ゲーム「バーチャルファイター」シリーズがスミソニアン博物館の常設展示コレクションに選ばれた。日本のゲームソフトもこのような形で世界に認められはじめた。


次世代CD(カーナビ編)

   合奏団が発足した10年前から我々は玉縄公民館で練習している。最近は車で練習に来る人が増えた。車で困るのは道路の渋滞で、練習に遅刻することもある。しかしこの渋滞のおかげで日本のカーナビ技術は世界一になった。転んでもただで起きないのが日本人の知恵で、パチンコ、アンパン、カラオケ以外にも日本が自慢できるものがあるのだ。
   カーナビのメモリーにはこれまでCDが使われていたが、これをいち早くDVDに替えた最新機種を各社が発売している。売れ筋商品のトップはパナソニックで、パイオニア、アルパインなどがこれを追っている。
   DVDはCDに比べてメモリー容量が格段に大きく、これをフルに活用した応用ソフトなども出てきた。運転者が運転に専念できるように、カーナビが音声でガイドしてくれるのは今や当たり前だが、言語切替によって同じガイドでも、
   「おばんどす、次の信号、右に曲がっておくれやす〜」という妖艶な女性の声、
   「ネ、ネ、ネ、、、次の信号右に曲がって〜、ワッカルカナ〜、ネェ、聞いてンノォ〜、エッ、うるさい?」というコギャルの声など、実に多彩だ。中には
   「オイ、次の信号、右に曲がれ」と、ドスの効いたヤクザの声まであり、逆らうと殺されそうな気分になる。
   操作も実に単純で、例えば行き先の電話番号を入力するだけで自動的に全国の電話帳から住所を調べてそこへ行く道順をガイドしてくれる。道路が渋滞すれば迂回路を案内してくれる。途中で家に戻りたくなったら、「これから帰る」としゃべるだけで良い。
   このソフトが用意されているのはパイオニアの主力商品「カロッツェリア」ブランドのDVDカーコンピュータセット。CD時代からダントツ人気で実にさまざまな応用ソフトが用意されている。
   松下も負けていない。DVDカーナビフルシステムでは全国680都市を25メートルの詳細地図で表示できるのを売り物にしている。いち早くDVDを商品化しただけに、今や人気はパイオニアを抜いてトップに躍り出た。
   ソニーも薄さ35ミリという小型を売りとするDVDナビゲーションシステムで車内の省スペースをうたい文句にしている。小型化ナビがどこまで威力を見せるか興味がある。オーディオ戦略で同社はSACDにこだわりを見せ、これをカーオーディオにも考えていたのか、DVDカーナビではスタートが遅れた。
   一方、NTT−MEと沖電気は小型携帯ナビと携帯電話を組み合わせて新たなサービスを考えている。カーナビも日本人の手にかかれば小型化はお手のもの。カーナビが携帯されるようになると、今のパソコンを超えるものに進化する。
   最近のカーナビの機能はパソコンよりも人間に一歩近づいている。今のパソコンを使いこなすには人間の方からこれに接近する努力が必要だが、その点で最近のカーナビは使い易い親切設計になっている。いち早くDVDを積極導入した成果なのかもしれない。

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